ステンレス鋼はその耐食性(腐食しにくい・錆びにくい)、強度、美観性に優れた素材です。そのためステンレス鋼の旋盤加工は、多くの産業で重要な役割を果たしています。しかし、ステンレスという素材の特性上、加工には多くの技術的困難を伴います。今回はステンレス鋼の旋盤加工に関する基礎知識を詳しく解説します。
1.なぜステンレスの旋盤加工は難しいのか
以下の3つの代表的な要因が組み合わさることで、ステンレスの旋盤加工は他の金属材料に比べて難易度が高く、精密な加工技術や工具選定が求められています。
①熱伝導率の低さ
ステンレス鋼は熱伝導率が低いため、切削中に摩擦によって発生する熱が工具に集中しやすくなります。これにより、工具が過熱しやすくなり、摩耗が早まり、結果的に工具寿命が短くなってしまいます。
②粘性が高く、切り屑が工具に絡みやすい
切削面の仕上がりが悪くなり、加工精度が低下することが多くなります。また、切り屑の排出が不十分だと工具が詰まり、さらに加工が困難になります。
③加工硬化しやすい
加工中に材料が硬化し、次の切削工程でさらに硬い材料を削る必要が出てくるため、工具の摩耗が加速します。この加工硬化は、特に連続切削が行われる場合に顕著で、工具の寿命や加工効率に大きな影響を与えます。
2.ステンレスの旋盤加工におけるポイント
①切削工具
ステンレス鋼の加工には、耐摩耗性の高い工具やコーティングされた工具が適しています。これらの工具は、熱伝導率が悪く、加工硬化しやすいステンレスの特性に対応し、工具寿命を延ばす効果があります。
②加工条件
切削速度と送り速度を適切に設定することが重要です。ステンレス鋼の切削速度は低めに設定し、切り込み量も適度にすることで、加工硬化を防ぎ、効率的な切削を実現します。また、工具の摩耗を最小限に抑えるために、連続切削ではなく、断続切削を考慮することも有効です。
③クーラント(冷却液)
高性能なクーラントを使用することで、切削中に発生する熱を効果的に抑制し、工具が熱くなりすぎることを防ぎます。クーラントは冷却効果だけでなく、潤滑効果や防錆効果も持つため、切削面の品質向上や工具寿命の延長にも寄与します。素材や作りたい製品のクオリティに適したクーラントの選定が旋盤加工の安定性を高めます。
3.当社のステンレス加工事例
変換ニップル SUS304
こちらの製品は丸物・旋盤加工.comにて製作した変換ニップルです。
SUS304を使用し特殊な形状に仕上げました。
ストレートネジからテーパーネジに変換する際に用いられます。
また水や錆に強く耐久性にも優れている点から水廻りやポンプ等に使用されます。
片ニップル SUS316
こちらの製品は丸物・旋盤加工.comにて製作した片ニップルです。
タンク等に新しく管接続を行う際にネジ側を外にして溶接を行うのに最適な継手です。
差し込み溶接をしめネジ接続可能にする為のステンレス製の片ニップルで耐食性にも優れております
4.まとめ
今回は、ステンレス鋼の旋盤加工について解説しました。
丸物・旋盤加工.COMでは、鉄やステンレス、アルミ、銅・真鍮、チタン、インバー、ハステロイなどのさまざまな材料の旋盤加工を行っています。
また、ステンレスにおいてはSUS303、SUS304、SUS316、SUS304L、SUS316L、SUS430をはじめとしたステンレス全般の旋盤加工、また、他に特殊なステンレスを調達、加工を行っています。お困りごとがございましたら、ぜひお問い合わせください。